広島高等裁判所松江支部 昭和25年(う)144号 判決
昭和二十年十二月二十八日法律第六十四号農地調整法中改正法律第五条によれば「農地ノ所有権賃借権地上権其ノ他ノ権利ノ設定又は移転ハ命令ノ定ムル所ニ依リ当事者ニ於テ地方長官又ハ市町村長ノ認可ヲ受クルニ非レハ其ノ効力ヲ生セス」とあり右法条は昭和二十一年一月二十四日勅令第三十七号により同年二月一日より施行せられておる。而して原判決の認定するところによれば被告人が村上馬之丈に対し本件田地を賃貸したのは昭和二十一年度よりとあり原審第一回公判調書中被告人の供述記載によれば被告人が村上馬之丈に対し本件田地を耕作せしめた時期は昭和二十一年三月末日頃であることを窺知することができる。果して然らば被告人と村上馬之丈の本件農地の賃貸借は右農地調整法中改正法律第五条により島根県知事又は所轄村長の認可を受けねばならないのに拘わらずこれを受けておらないから本来無効のものである。その後昭和二十二年五月十七日中条村農地委員会が被告人及び村上馬之丈間の本件農地の紛争について調停を試みたけれども被告人はこれを承諾しておらず(このことは原審公判調書中被告人の供述記載、同調書中証人大野宗松の供述記載によつてこれを認定し得る)被告人において昭和二十三年七月十八日島根県知事に対し本件農地に対する賃貸借契約解除の申請をし不許可になつたからと言つてそれは被告人が無用のことをしたに過ぎぬのでこれがため本来無効の賃貸借に消長を来すものではないから被告人の本件農地の賃貸借契約の解除、本件農地を村上馬之丈より取り上げたことを以て農地調整法第十七条の五第一項第二号に問擬することはできない。然るに原審ことここに出ず被告人の行為を以て右法条に該当するものとして被告人を処断したのは法令の適用を誤つたものでありこの誤が判決に影響を及ぼすことが明かであるから原判決はこの点において到底破棄を免れない。